前に、ある和菓子職人のおじいさんと話す機会があったんですよ。
とても穏やかで、しゃべるのもゆっくりでね。
こっちはせっかちだから、つい『もっと早くできないのかな?』って思っちゃうくらいだったんですけど…
でも、そのおじいさんがこんな話をしてくれたんです。
「『昔な、私もせっかちだったんや。なんでも早よ早よって思ってた。
でも、ある日、お師匠に言われたんや。“急いでるときほど、ゆっくりやりなさい”ってな』」
「まだ若かった頃、おじいさんは和菓子の練習中に焦って餡を焦がしてしまったんだそうです。
でも、お師匠さんは叱るんじゃなくて、にっこり笑ってこう言ったんです。
『お前が急いでも、時間は急いでくれんのや。急ぐと見えなくなるもんがある。
“今ここ”を味わうことが、本当の職人や。』
それがずっと胸に残ってるって言ってました。」
「それからおじいさんは、何をするにも一呼吸置くようになったそうです。
息を整えてから、手を動かす。すると、不思議と失敗も減って、味も安定してきた。
『ゆっくりは、丁寧なんや』って、ぽつりと呟いてました。」
「その言葉、なんだか今の自分に必要だなって思ったんです。
焦りそうになったら、“急いでるときほど、ゆっくり”って思い出す。
そんなふうに、自分を少しずつ整えていけたらいいですよね。」
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