「最近、入札の値決めでどうしても冷静さを欠いてしまう。
“ここで勝たないと”という思いが強くなって、
本来の戦略や相場観から外れてしまっている気がする。
そんなとき、ふと思い出した話がある。」
「昔、ある小さな漁村で競りが行われていた。
魚を売る商人たちは、声を張り上げて、目を光らせていた。
でも、その中に一人だけ、全然慌てずに“静かに値を決める”老人がいた。」
「ある日、若い弟子がこう言った。
『師匠、どうしてみんなが競り上がってるのに、焦らないんですか? 取られたら損じゃないですか?』
すると老人は、静かにこう答えた。
『いいか、値段は数字に見えて、“感情の鏡”なんだ。
他人の感情に振り回されて値を決める者は、いつか必ず後悔する。
一番大事なのは、“自分が勝てる場所を見極める目”と、“引く強さ”だ。
勝負は、買ったあとに始まるんだよ。』」
「その後、弟子はだんだんとその意味が分かるようになった。
勝ちたい時ほど、冷静に。欲が出た時こそ、引くことを恐れない。
そうすると、結果として“利益が残る”ようになった。」
「…入札もきっと同じだ。
周りの値や動きに流されて、自分を見失った時が一番怖い。
“勝つ”じゃなく、“残す”という視点。
冷静であることは、弱さじゃなく、強さだったんだなって。」
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